​U・ボート​

ドイツの映画監督、ウォルフガング・ペーターゼン氏が亡くなりました。ハリウッドに活動の場を移してからは、『エアフォース・ワン』(1997年)などの娯楽作品が多かったイメージがあります。私のベストは、『U・ボート』(1981年)です。第二次大戦の敗戦国であるドイツの潜水艦映画です。(私が観たのはディレクターズ・カット版です)。

 

ラストシーンの不条理さが好きです。戦闘を生き延びて港に帰還した兵士たちを空襲が襲います。為す術もなく逃げまどい、倒れていく兵士たち。致命傷を負った艦長が、無人のまま沈没していく自分の潜水艦を見届けます。潜水艦の戦闘では優れた能力を発揮する兵士たちがあっけなく死んでいくラストに、戦争の不条理さが凝縮されていると思いました。

 

残虐なシーンで反戦を伝えようとする映画は、私にダメージを与えます。そんな映画は、映画として失格だと思っています。娯楽としての役割を捨て、反戦教育のための映画になってしまっています。『U・ボート』は音楽も素晴らしく、私にとっては娯楽としても成立しています。

 

空襲に反撃できないラストを不条理に感じますが、潜水艦の魚雷で撃沈した輸送船と立場が逆転しただけなのです。攻撃する側からの描写を「戦争だから」と正当化する一方で、攻撃される側からの描写は「不条理」だと思いました。殺される側から見ると不条理なのに、殺す側からは不条理に見えないのが、戦争の不条理だと思いました。

​2022年9月5日