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​オサムと妻

 先週の朝日新聞朝刊に、『「ツレ」が発達障害』という連載がありました。ネットに有料記事しかなく、紹介できないのが残念です。第1回は、『迫る発車時刻「おみやげ買う」とどこかへ』、『時間感覚なし 悩んだ夫、受診を提案』、『妻を何とかしたい』という、見出しが並んでいます。会社員のオサムと妻の話です。私は、オサムに怒りを持ちました。被害者ぶっているけれど、妻を苦しませ、オサムの苦しみもオサムが作り出しているからです。

 

 在来線から新幹線への乗り継ぎ時間がわずかなのに、お土産を買いに行って乗り遅れた。時間の感覚がぶっとんでいて、午後6時になっても炊飯器のスイッチすら押されていない。おまけに、片付けも苦手。と、事例が書かれています。オサムに感じる怒りの理由は、何度も出てくる「妻を何とかしたい」という発言です。発達障害者支援センターの相談員への要望も、「妻を何とかしてほしい」なのです。オサムは、妻の特性が治ると思っているのです。オサムのような人間が、発達障害を持つ人を苦しめます。発達障害の特性で困っていても、苦しんでいない場合もあるのです。

 

 オサムのような人間は、どこにでも出現します。映画『マトリックス』のエージェントのように。仮想現実に侵入した主人公たちを排除するエージェントは、近くにいる一般人をエージェントに書き換えて出現します。私も、エージェントに出会います。エージェントたちの言うことは共通しています、「がんばれ」。年齢分の経験で、改善できないのを知っているつもりです。でも、エージェントたちは言うのです、「かんばれ」と。

 

 連載を書いた記者にも怒っています。お前もエージェントだな。夫を「オサムさん」とするけど、妻には名前がなく「妻」なのは、妻を人間と思っていないからでしょう。オサムの理想の妻像は、オサムの分身です。“オサムがオサムの妻になった場合の妻像”を、妻に求めているのです。「土鍋は洗剤を使わず金たわしで洗え」、「食事に汁物は必須」、「子どもに菓子パンを与えるな」は、発達障害とは無関係です。私には、オサムに問題があるように見えます。お互いの苦しみを軽減する方法を考えるべきなのに、苦しみを増やしています。オサムのひとり相撲。炊飯器のスイッチを自分で押せよ、オサム。タイマー付きのを買えよ、オサム。

 

 私の感想は、「大手新聞でもこの程度かよ」です。鈴木彩子記者がオサムに肩入れしているように感じました。

2022年11月14日

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