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争わないレース
7月30日にNHK BS1で放送された『グレートレース』の内容は、ウルトラトレイルマウントフジ2023でした。富士山周辺の山中を164.7km走ります。累積標高6,451m。優勝した中国人ランナーの驚異的な速さは、プロ選手が増えて先鋭化が進んでいることを思わせました。一方で、上位争いとは無縁の一般のランナーにもスポットが当たり、スポーツ本来の楽しみ方も映し出されているように思いました。
印象に残ったのは、手をつきながら山を登る、最下位と思われる女性ランナー。「間に合わないのだけは絶対に嫌」と言いながら、フィニッシュ地点を目指します。フィニッシュ地点目前の駐車場までたどり着きながら、車道と歩道の間にある段差を越えられず、関門時間を過ぎてしまいます。3分50秒オーバーでたどり着くも、記録はDNF。関門時間という争うものがなくなってもフィニッシュを目指す姿が、美しく見えました。
私は、競争力のない者にはスポーツをやる資格がないと思っていました。体育で「お前のせいで負けた」と、スポーツが得意な子から責められた経験が理由です。今でも、望む結果にならすに怒りの感情を見せる選手を嫌悪します。私を責めたスポーツが得意な子の怒りの目と重なるからです。しかし、ここには怒りの感情を見せるランナーは見当たりませんでした。
リタイアを決断したランナーにも、怒りの表情は見えません。なぜか、満足そうに見えます。フィニッシュするランナーたちは、みんな楽しそうです。スポーツは敵に勝つものだと思っていましたが、ここでは違うみたいです。トレイルランニングに興味がないのに、なぜか見てしまうグレートレース。何位でも楽しめる、何歳でも楽しめる。これが、本来のスポーツの姿な気がします。
2023年8月15日
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